東京地方裁判所 平成2年(ワ)2014号 判決
原告
株式会社クイン
被告
ヅーエル化学工業株式会社
ほか一名
主文
一 被告らは、連帯して、原告に対し、九二万三五三一円及びこれに対する平成二年三月八日(但し、被告石津総一は同年三月一九日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用はこれを二分し、その一を被告らの、その余を原告の各負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、連帯して、一四一万三一一五円及びこれに対する平成二年三月八日(但し、被告石津総一は同年三月一九日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 本件事故の発生等(当事者間に争いがない)
1 平成元年六月五日午後四時五〇分ころ、東京都葛飾区堀切四丁目二六番先路上において、被告石津総一運転の普通貨物自動車(加害車)が原告所有の普通貨物自動車(被害車)に追突し(本件事故)、被害車が大破するに至つた。
2 本件事故は、被告石津の前方不注視等の過失によつて発生したものであり、被告ジーエル化学工業株式会社は被告石津の使用者であり、加害車の所有者でもある。
二 原告主張の損害
1 被害車が本件事故により大破するに至つたので、原告は、平成元年六月三〇日、やむを得ず、同種の車両を一一九万六四一五円で購入した。
2 被害車は、平成元年五月一〇日に車検を受けたばかりであり、原告は、その際、その費用として、次のとおり合計一万六七〇〇円を支払つたが、これが本件事故により無駄となつた。
車検代行手数料 七〇〇〇円
自動車重量税印紙代 八八〇〇円
自動車検査登録印紙代 九〇〇円
3 弁護士費用 二〇万円
三 被告らの主張
1 原告は新たな車両の購入費用を請求するが、原告が請求し得る損害は、被害車の本件事故時の車両価格であり、それは九〇万五〇〇〇円であつた。
2 車検費用は本件事故と相当因果関係がない。
3 被告らは、原告に対し、本訴訟前に被害車の時価額ほか代車料金をも含めて一〇〇万五〇〇〇円を提示しており、原告はそれにもかかわらず本訴を提起したのである。この事実は弁護士費用の算定にあたつて十分考慮されるべきである。
第三裁判所の判断
原告の損害は次のとおりであると認められる。
1 乙一号証の一ないし三によれば、本件事故当時の被害車の車両価格は九〇万五〇〇〇円であつたと認められる。
原告は、同種の車両の購入費用を請求しているが、新たな車両の購入を相当と認めるに足りる証拠はなく、そして、全損の場合の車両損害額はその事故当時の車両価格とみるべきであるから、原告の右主張は採用できない。
2 次に、原告は、車検代行手数料七〇〇〇円、自動車重量税印紙代八八〇〇円、自動車検査登録印紙代九〇〇円を本件事故による損害として請求する。
証拠(甲二ないし四、乙三)によれば、原告は被害車について平成元年四月に車検を受け、その車検代行手数料として七〇〇〇円を、自動車重量税印紙代として八八〇〇円を、自動車検査登録印紙代として九〇〇円それぞれ支払つたこと、右車検の有効期間は平成元年四月二二日から翌平成二年四月二一日までであつたことが認められる。
しかしながら、右車検代行手数料は車検手続代行者に対する謝礼であつて、車検を受けるに際して必ずしも必要ではないから、これが無駄になつたからといつてそれを加害者に請求することはできず、結局、自動車重量税印紙代及び自動車検査登録印紙代について、残存車検有効期間分だけ本件事故による損害というべきである。そうすると、その額は、八五三一円((八八〇〇円+九〇〇円)÷三六五日×三二一日(平成元年六月五日~平成二年四月二一日))となる。
3 弁護士費用
被告らは原告に対し本訴前に損害賠償として被害車の車両価格九〇万五〇〇〇円を提示していること(当事者間に争いがない)、それにもかかわらず原告は新たな車両の購入費用の支払いを求めて本訴請求に及んだものであること、本判決ではその主張が認められなかつたこと、その他本判決の認容額等を考慮すると、原告が被告に請求し得る弁護士費用は一万円をもつて相当というべきである。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 原田敏章)